日本の価値観を世界に広めたい。

メイド・イン・ジャパンの
“おもてなし”を、世界ブランドへ。

Plan・Do・See 
代表取締役 野田 豊加

立教大学の観光学部を創立した父親を持つ代表の野田氏。子どもの頃から日本各地のホテルやレストランなどで一流の「おもてなし」に触れてきた。その素晴らしさをもっと世界の人々に伝えていきたいと1993年に創業したのがPlan・Do・Seeである。昨今の日本ブームではじめて日本を訪れた人の多くが驚き、感激する、日本の「おもてなし」文化。その心が息づいているホテルやレストランを、世界中の主要都市に創っていきたい。かつて日本のものづくりが世界へ出て行ったように、日本のおもてなしの心が、世界の人々に幸せをもたらす世の中をつくっていきたい。ミッションは「日本のおもてなしを、世界中の人々へ」。現在、スタッフは1000人を超え、働きがいのある会社ランキングも常に上位。国内のホテル、レストランの展開はもとより、NYのレストランではミシュランも獲得。アジアではISETANと組んでレストラン街のプロデュースなど快進撃を続けている。

世界を知ってわかった

日本のサービスレベルは、
高い

高校時代、海外から戻ってきた帰国子女が、クラスメートにたくさんいたんです。彼らはいつも、日本のダメなところばかり指摘していました。あれがダメだ、これがダメだ、と。そんなあるとき、海外のホテルやサービスがいかに素晴らしいか、という話を彼らがしていて。

父親が立教大学の観光学部を創った教授だったこともあって、ホテルやレストランの話題は日常的に交わされる家でした。毎週のように家族でホテルに食事に行っていて、日本の一流のホテルやサービス業の素晴らしさを、幼い頃から実感していたわけです。

ところが、海外のホテルやサービスは素晴らしいという。どんなものか、と思っていて、20歳を過ぎて海外に行くようになって、僕はびっくりするんです。ニューヨーク、ロンドン、ロサンゼルス、ハワイ……。いろいろ行きましたけど、日本のサービスのほうが圧倒的に素晴らしかった。

ホテルだけじゃない。海外に行ってみてわかったのは、日本のサービスのホスピタリティの高さでした。掃除ひとつとってみても、まるで違う。建物の中だけじゃない。繁華街でも、路上にゴミなんてないでしょう。外国みたいに、道路にゴミが何日もへばりついていることなんて、まずない。

駐車場にしても、みんなきちんと停めるでしょう。迷惑をかけないように、と誰もが気遣っているわけですね。そして、ウォシュレットのような画期的な製品が、日本からはたくさん生まれてきた。

だからこそ、ずっと不思議に思っていたんです。どうしてこれほどのホスピタリティがあるのに、そのホスピタリティを象徴する日本のホテルは海外に少ないのか、と。日本のホテルがあれば、もっと世界に日本のホスピタリティをアピールできる。日本の良さをアピールできる。日本人として、プライドを持ち、誇りを持てるんじゃないか、と。

会場は有名ホテルだったんですが、サービスも料理も本当にひどいものでした。サービスマンはまるでやる気がない。僕は幼い頃からホテルに通っていましたから、普段のホテルのランチやディナーと比べると、まず考えられない料理の質であることにすぐに気づいたんですね。

どうしてこんなことになるのか。大手ホテルのセールスマンに話を聞いてわかったんです。結婚式というのは、ホテルにとってはドル箱。ものすごく儲かる。粗利は5割から7割。それこそ、このビジネスがあるから、ホテルはやっていけるのだというわけです。宿泊なんて二の次で、結婚式で儲ければいい、と。

しかも、結婚式はリピートビジネスではありません。何度も結婚式をする人はいないから。やがてホテルでは、「結婚式はこの程度のサービスでいい」という認識が当たり前になっていったのではないか、と思いました。折しも有名な外資ホテルが日本に上陸することになっていて、そこに転職することが決まっていた友人に聞いたら、本当に収益の6割は婚礼だというんです。外資系のこんなすごいホテルでもそうなのか、と驚きました。

受け手側から発想すれば、

サービスは変わっていく

もしかしたら、婚礼を制したら、ホテルを制することができるんじゃないか。もっといえば、日本のサービス業を制することができるんじゃないか、と思いました。

でも、その肝心の婚礼がひどい状況にある。それで、「ウェディングの企画を請け負わせてほしい」とホテルに売り込みに行くことにしたんです。僕は、東京の最前線のトレンドエリアで遊んでいる若い女性たちにウェディングプランニングの担当をしてもらったら、相当面白いものができるという確信がありました。それまでは、多くがごく普通の中年女性たちがプランナーをやっていたわけです。彼女たちに、若い人が満足できるようなお洒落なウェディングプランができるとは、とても思えなかった。

そこで、プランニングも、料理も、イベントの内容も、サービスの受け手側から発想して、斬新なものにできるとホテルにアピールしました。ところが、まるで受け入れてもらえなかった。自分たちは、すでにちゃんとやっているから、と。

そんなとき、気が付いたんです。日本ではバブル期にお洒落なフレンチレストランがたくさん作られていました。でも、バブル崩壊後の不況で、店はガラガラになってしまっていた。もし、ウェディングをレストランでやれば、できたてのおいしい料理が提供できます。そこで、レストランでウェディングをやればいいんじゃないか、と。

もうひとつ、外国映画ではよく、自分の家をコーディネートしてウェディングパーティを開いている映画によく出会いました。しかし、日本ではパーティができるほど家が大きくない。そこで、パーティ用のハウスを用意したらどうかと思いました。これが、ハウスウェディングのビジネスになっていったんです。

異なる文化を
融合させるスタイル
それには、
両親が大きく影響している

日本の戦前の邸宅は、いろんな国の文化をミックスさせた、素晴らしいものがたくさんあるんです。僕はもともと居心地のいい空間が大好きなんですね。しかも異なる文化がミックスされ、マッチした空間。これも、両親の影響が大きいかもしれません。

両親は30代でアメリカに暮らしていた時期があります。最もアメリカが輝いていた時代、最もインテリジェンスの高い人たちと交流をして、そのライフスタイルの影響を強く受けていました。日本に戻ると、外国人の多く住む広尾や六本木に暮らしました。当時は純和風の家に暮らしていたんですが、世界中を旅して買ってきた異文化のアンティークなどがインテリアとして置かれていて、見事にマッチしていたんですよね。そのコーディネートをしていたのが、母でした。

母は間違いなく当時のトレンドリーダーの一人でした。どこに行ってもお洒落で若々しい人で通っていた。子どもたちのファッションにも、そのセンスは存分に発揮されていて、僕は小学校時代から、ニューヨークで流行していたジーンズを誰よりも早くはいたりしていたんです。

他の誰かにできるなら、

自分たちはやらない

最近のリノベーション案件といえば、名古屋の「ナンザンハウス」があります。建物は100年近く前のもので、大邸宅の並ぶ高級住宅街の中に、敷地1200坪のレストランがかつてあったんです。異文化が組み合わさった見事な雰囲気の建物と素晴らしい庭を持ったこの地の営業権を、縁あって手に入れることができました。

魅力的な建物に出会うと、まずは原形に戻すことを考えます。そこから、薄化粧を施すんです。もともとあった建物にリスペクトしながら、少しずつ手を加えていく。素晴らしい建物は、庭の1本の木の植え方ひとつとっても違うんです。プロフェッショナルが本気で作った気合いが伝わってくる。そうした空気感は、間違いなくお客様にも伝わります。リノベーションしてウェディングを行っていますが、当初の予想の2倍以上の人気になっています。

僕たちのリノベーションは、元の力をしっかり活かすことを考えるから、建物のオーナーにも喜ばれるんです。だから、「ぜひウチも」という要望はたくさんやってきます。でも、引き受けるのは、100のうち1つか2つ。歴史や伝統があればいい、というわけではないし、異文化がミックスされていればいいわけでもない。何か光るものがなければ、引き受けることはありません。

選択の基準は、リノベーションや運営をするのが、僕たちでなければいけない理由があるかどうかです。他の誰かにできるかもしれないと思えたら、引き受けません。そういう場合は、他の会社が運営を担うことを前提に、コンサルティングだけ引き受けることはあります。

レストランも同じです。多くの出店要請をいただいていますが、自分たちでなければいけない理由がほしい。有名な商業施設や流行の施設から声をかけられても、まったく魅力を感じません。そうではなくて、とんでもなく個性的な立地、不思議な空間、びっくりするような場所……。そんなサプライズをいつも求めています。

場所は日本国内に限りません。世界中で展開してみたいですね。すでにアメリカには進出していますが、ヨーロッパ、アジア、どこでも興味はあります。

ホテルにせよ、レストランにせよ、ウェディングによせ、人がすべて、という考え方を持っています。だから、採用にもこだわりますし、入社後も注意して人材を見ていかないといけないと思っています。やっぱり成長するのは、ホテルの仕事、サービスの仕事を本気で楽しいと思っている人なんです。本当は好きではなかった、ということになると、やっぱり伸びない。伸びても、やがて壁が来る。これでは、ビジネスの成長だけでなく、社員自身の成長も望むことができなくなります。

本当にサービスが好きかどうかは、ちょっとしたことからでもわかります。例えば、一緒に食事に行く。僕はメニューをもらうと、じっくり眺めます。なぜなら、楽しくて仕方がないから。自分の料理だけでなく、人の料理のことまで考えてしまう。ところが、メニューが配られると、ちゃんと見ないであっという間に決めてしまう人もいます。メニューに興味が持てない。これでは、レストランの経営など、務まるはずがないと僕は思うんですね。

日本人が
本当に満足できるホテルが、

アメリカにあるか

実際、一緒に食事に行って、メニューをちらっと見るだけで、あっという間に中堅社員に、他の仕事を探したほうがいい、とアドバイスしたことがあります。頑張って実績を挙げていた優秀な社員でした。でも、それ以前から、こいつは本当にサービスが好きなのか、と思わざるを得ない言動が数多くあったんです。

僕の言葉に彼は泣きましたが、泣きたいのは僕でした。社内からも慕われて、順調に出世していた優秀な社員だったから。僕こそ手放したくなかった。でも、サービスが好きではない人間に、働き続けてもらうわけにはいきませんでした。それでは、メニューを一生懸命に作ってくれる彼の部下にも申し訳がなかったし、彼自身にも失礼だと思いました。

僕は料理は作れないし、図面もかけません。フロントのチェックインもチェックアウトもできない。ソムリエの資格もないし、ワインのぶどうの種類も3つくらいしか知らない。でも、サービスが好きだし、レストランが好きだし、ホテルが大好きなんです。何より居心地のいい空間が好き。その気持ちは誰にも負けません。その気持ちこそが、事業を作っていくのだと思っています。そんな気持ちを持てないのであれば、事業はきっとやがてうまくいかなくなる。僕は彼の転身を支援しました。彼はIT業界で独立しました。今や1億円近い利益を出す会社を作って、大成功しています。それで良かったと僕は思っています。今も親しい友人の一人です。

ニューヨークのホテルのサービスは、まだまだだと思っています。それこそ、サービスをちょっとだけ良くして、ウォシュレットをつけるだけで、稼働率は10%は上がると感じています。例えば、どうしてアジア人向けの新聞がホテルにないのか。どうしてアジア人向けの料理のレベルがあんなに低いのか。日本のホテルには、韓国人用や中国人用の新聞が置いてあります。ホテルの中の中国料理だって、とてもおいしい。


では、ニューヨークはどうでしょうか。ホテルに日本料理はありますが、果たして満足のいくレベルのものか。朝食ひとつとっても、サーモンも卵焼きも小さく、梅干しが8個も皿の上にのってきたりする。日本のことが、まるでわかっていないとしか思えない。日本人のスタッフに「これはどう思うか」と聞いてみれば、間違いなくそのおかしさに気づけるはずなのに、それをやっていない。やろうともしていない。


だから、僕らはそれをやればいいと思っているんです。それだけで、間違いなく日本のトップビジネスマンは、僕たちが運営するホテルに泊まると思います。中国人や韓国人も来るはずです。自国の新聞はあるし、日本と同じレベルの中華料理や韓国料理が出てくるからです。

日本には、世界に誇れる
「おもてなし」の文化がある

アメリカのホテルは、アメリカ人のことしか考えていないのではないか。本当はそんなことは思っていないのかもしれませんが、僕たちにはそう見えるんです。それこそニューヨークでは、ニューススタンドに行けば、世界の新聞が3ドル以下で買えるんです。ところが、どうして1泊700ドルも払っているのに、部屋に新聞を入れてもらうと7ドルもかかるのか。ニューヨークタイムズなら無料なのに。


僕たちは、日本経済新聞をそっと入れてあげます。インド人には、インドの最も人気の高い新聞を入れます。誰もやらないから、僕たちがやるんです。日本には、世界に誇れる「おもてなし」の文化があります。日本を訪れた人の多くが、驚き、感激してくれるサービスがあります。それは、相手を理解し、相手が求めるものに応えたいという強い気持ちから生まれるものです。だから、世界の人々は、驚き、感動してくれるんです。


この「おもてなし」の文化を、世界に広めたい。世界に「おもてなし」のサービスを持ったホテルを作りたい。それは、絶対に受け入れられると思っています。なぜなら、間違いなく、人々が求めているものだから、人々に、喜んでもらえるから。


5年前、ニューヨークにレストランを出したとき、最初は誰も来てくれませんでした。無理もなかったと思います。誰も知らない、無名のレストランです。簡単には来てもらえないと思っていました。実際、いつ行ってもガラガラでした。でも、料理は本当においしかった。行く度に、僕はシェフと確認していました。「これは本当にうまい」と。サービスも良かったんです。丁寧で、お客様のことを理解しようとしていて。だから、絶対にいずれお客様が入ると思っていました。このクオリティを守ることだけを考えよう、と話をしました。今、このレストランはミシュランで星をもらい、ニューヨークで予約を取るのが、最も難しいレストランのひとつになっています。


サービスのビジネスで、一番うれしいことは、高いレベルで、高い稼働率を誇ることです。逆に一番不幸なことは、低いレベルなのに、お客様が入ってしまうことです。これは本当に辛いし、危ない。もちろん長続きはしません。だから、すべてが高いレベルから始めます。それが、Plan・Do・Seeのポリシーなんです。

ライター:上阪徹

(インタビュー内容は2013年8月現在の内容です)