一人ひとりが自分らしくいられる社会を作りたい。

おしゃれすることを
あきらめない世の中を目指して。

デザイナーズブランドのユーズドセレクトショップとして、ファッション業界においてひときわ異彩をはなつ株式会社ティンパンアレイ。その全ての始まりは、東京・青山のあるブランドショップで創業者の高橋直樹氏が目にした光景にあった。「これかわいいね。でも私たちには買えないね」欲しい服を前に残念そうな顔を浮かべる2人の女子高生。高橋氏はその姿を見て、「おしゃれがしたいという、この女の子たちの純粋な気持ちを応援したい」と考え、1985年原宿竹下通りに『RAGTAG』1号店をオープンする。

創業時から変わることのない姿勢を言葉にまとめ掲げたミッションは、「ファッションを通して一人ひとりの願いを叶え続けること」。おしゃれになることをあきらめない世の中の実現を目指し、日本全国に店舗を展開。現在では『RAGTAG』と『rt』併せて全国に15店舗を展開。一方で、いいものの価値を伝え、ずっと大切にしていく文化をつくることに本気で取り組んでおり、世の中の模造品撲滅を目指した『憎むべきニセモノ展』、行き場のなくなった洋服を組み合わせて世界にひとつしかないアイテムをつくりだすリメイクプロジェクト『R PROJECT』なども手掛けている。インターネットやスマートフォンの普及に伴い店舗販売へのニーズが多様化する中で、現代表の平野氏が目指す訪れるたびにワクワクする、欲しかったアイテムと出会える場所とはなんなのだろうか。

時代を先駆した創業。

私たちが原宿竹下通りに『RAGTAG』の1号店をオープンした1985年は、空前のDCブランドブームが巻き起こっていた時代でした。青山のブランドショップで見た女子高生のような人は、きっと他にもいるに違いない。お金がないことを理由に憧れのブランドの服をあきらめてしまう人たちに、おしゃれを楽しんでもらいたい。創業者の高橋が21歳という若さで、これまでになかったデザイナーズブランド専門のユーズドセレクトショップのオープンを決意した根底には、そうした想いがありました。当時から、私たちが大切にしていたのは、お客様に買い物を楽しんでいただくために何ができるかを考え、ファッションの楽しさを体感していただく接客スタイル。きちんとした接客マナーや商品知識をつけるためスタッフは全て正社員として採用していました。従来の古着屋のイメージとは一線を画すため、店内はブティックと見間違えるほど洗練された内装を施し、商品を整然と並べるよう心がけました。当時は前例もなかったデザイナーズブランドの買い取り。商品の価値を見定めるため、社員はみな毎日のように様々なブランドショップを訪れ、街角の若者に話を伺い、雑誌を読んで、どのブランドがどれくらい人気があるのかを独自に調査しました。いつしかお店は買い取りを待つ人で行列ができるようになり、買い物にきたお客様からは「好きなブランドの服がたくさんあるから、欲しいものが必ず見つかる」といったお言葉をいただくようになっていきました。

1号店のオープンから9年後、下北沢に2号店をオープン。この2号店のオープンをかわきりに翌年には渋谷店、その翌々年に千葉店と着々と店舗を増やしていきました。そして遂に2005年には大阪BIG STEP 2階に関西初進出となる『RAGTAG 心斎橋店』をオープン。関東圏では東京を中心に知名度があがってきていたものの、関西圏ではまだまだ知名度が低く、最初は苦戦を強いられました。ビラ配りやカフェや美容院などへのチラシの配布など、地道な努力を重ねることで徐々にお客様に来店して頂けるようになり、1年後には関西進出の足場を固めることができました。その後は、名古屋、神戸、福岡へと全国に店舗展開を拡大していき、ビジネス雑誌に成長中の企業として創業者のインタビュー記事が掲載されたこともありました。

2012年には創業者の高橋が引退を宣言。2年間の引継ぎ期間を経て、2014年に現在の体制となりました。

「大阪に初めて店舗を立てたときは大変でしたよ(笑)。自分でチラシを作って配り歩いていた日々が懐かしいです。」

取り払われた垣根。

2017年、創業から32年の月日が経ちますが、私たちを取り巻く環境は驚くべきスピードで変化し続けています。特にオンラインショップが登場してからは、24時間、何処にいても欲しいものを探すことが可能となり、お客様の購買行動も大きく変わりました。

私たちがオンラインショップを立ち上げたのは2003年。14年前のことになります。社員が3人で細々とECサイトを運営していた当時は、それほど大きな影響を感じてはいませんでしたが、スマートフォンが一般に普及してから、急速に環境が変わっていきました。以前の買い物は、お店に来て欲しい服を探すという、宝探しのように出会いを楽しむことが普通でした。しかしオンラインショップであらかじめ欲しい服を見つけてから店舗に足を運ぶことが当たり前になり、お客様の欲しい服へのアプローチの仕方が変化したのです。また、これまで店舗は買い物を楽しむ場であるとともに、情報発信の場でもありましたが、今ではインターネット上で、様々な情報を一瞬にして得ることができるようになっています。情報発信の場という店舗の役割は、オンラインにとって代わられることとなったのです。

しかし、それは私たちにとって、とても良い影響も与えてくれました。それは、簡単に多くの情報に触れられるようになったことで、これまで古着に興味を持っていなかった方たちが興味を持つようになり、新品と古着の垣根が取り払われていったことです。私たちは古着のマイナスイメージを払しょくするために、さまざまな取り組みを行ってきました。お客様からお買い取りしたお品物を店頭に並べる前に、すべて状態をチェックしタグに詳しい情報を記載していることもそのひとつ。多くの情報が溢れ価値観が多様化していく中で、新品も古着も関係なく、自分の好きな洋服を探すことが一般的になり、私たちの存在も認知され想いが届きやすくなっていったのです。

オンラインで発揮される誠実さ。

オンラインショップの登場で垣根が取り払われ、ファッション業界に新しい時代が到来しました。しかし、そのような時代にあっても変えてはいけないものがあります。それは、私たちが大切にしてきた、ファッションを通して一人ひとりの願いを叶え続けたいという想いです。私たちはオンラインショップで商品を紹介するとき、落としきれなかった汚れやキズがある場合は、それを写真で撮影し説明しています。それはユーズドアイテムを安心してご購入頂くために、絶対に必要なことだと、私たちは考えています。商品が購入できるオンラインショップは1つの店舗です。店舗で行っている接客と同じことができなければ、私たちがオンラインショップを展開する意味がありません。

また、私たちの店舗ではオンラインショップの商品を取り寄せることができるようになっています。お客様には店舗の在庫にある商品だけでなく、オンラインショップにある20万点の中から商品を選んで、ショップスタッフとじっくりと相談しながら購入を判断していただくことができます。店舗とオンラインショップがお互いに補填し合うことで、私たちらしさを具現化することができました。

一昔前までは、お客様から質問されたときに、的確に答えられるブランドの知識はとても重要でした。しかし、現在は、単なるブランドの情報だけであれば、検索すれば瞬時に知ることができます。そんな時代だからこそ、わざわざ店舗まで足を運んでくださったお客様には、心に残る楽しい店舗体験を提供したい。そのためにも、これからも前例のないような新しいことに挑戦していかなければいけません。

挑戦は先駆者の運命。

私たちはこれまでにも多くのことに挑戦してきました。世にはびこるニセモノ(模造品)を撲滅し、本物のファッションを安心して楽しんでいただく世の中を目指して開催した『憎むべきニセモノ展』。いいものの価値を伝え、ずっと大切にする文化をつくるため、さまざまなクリエイターとコラボレーションし世界にたった1つのアイテムをつくりだしたリメイクプロジェクト『R PROJECT』。昨年には、イセタンメンズとの協業で、期間限定ショップ『UNDEADSTOCK COLLECTION』をオープンしました。1階では、三越伊勢丹のバイヤーがRAGTAGの在庫からアイテムを選んで販売。2階ではRAGTAGのバイヤーによるお買い取りを実施し、2週間の期間限定でしたが、大好評のうちに幕を閉じることができました。このような企業とのコラボレーションは、今後も、増やしていく予定です。

常に新しい取り組みを行ってきた私たちですが、これまでほとんど宣伝活動をしていません。デザイナーズブランドのユーズドセレクトショップとして唯一無二の存在であったこともありますが、おしゃれに対してアンテナの高い一部の人たちのあいだで評判が口コミで広がり、新しい出会いを生んできました。それは私たちがファッションを通じて、一人ひとりの願いを叶え続けるということを店舗で実践し、接客を通じてお客様に伝えることができていたからです。

こうした状況は、自然と生まれるものではありません。私たちの存在価値を、社員一人ひとりが深く理解し体現していけるように、入社後の研修にも力をいれています。お客様は欲しい服を購入するだけなら、もはやお店に来る必要はありません。お客様の胸の内にある不安と期待を察知して、不安をなくし、期待を上回ることができる接客が求められているのです。

憧れを手にする喜び。

テクノロジーの進化に伴い、環境が変化するスピードはますます速くなってきています。こうした時代には、変化を受け入れながらも新しい挑戦を続けていかなければいけません。好奇心をもってなにごとにも率先して取り組みながら、状況に合わせて柔軟に対応していくこと。
私たちは、毎年1回、ゼロベースに立ち返り組織体制を考え直します。昨年は、役員の異動、オンラインショップを担当するEC部門の組織変更、人材育成部門として新しい部署の設置、企画・販売促進部門のスタッフ増員などを行いました。現在は、店舗の拡大よりも店舗の質の向上を目指しており、時代の変化を見据えた組織作りに取り組んでいます。

新しく私たちの仲間に加わる方には、まず最初は店舗で経験を積みながら、ファッションを通して、一人ひとりの願いを叶え続けるということを体現して欲しいと思っています。
ティンパンアレイでは、ファッションが好きという気持ちはとても大切なことです。当然、好きなブランドや嫌いなブランドなど、あなた自身のこだわりもあるでしょう。それと同じように、あなたが嫌いなブランドに強いこだわりを持つお客様がいらっしゃいます。私たちの一員として店舗に立つときは、あなたのこだわりが、ファッションを通じて、目の前のお客様一人ひとりの願いを叶え続けることに繋がっているかどうかを胸に手を当てて考えるようにしてほしい。ファッションが大好きな大学生と、ファッション業界に身を置いてビジネスとして関わる人には、そこに大きな差があります。もちろん同じくらいの確率で、あなたのこだわりが活かせる場面もきっと訪れます。32年前、青山のブランドショップで欲しい服を前に残念そうな顔を浮かべた2人の女子高生。あの時の2人のようなお客様が、憧れの洋服に出会うために、店舗で接客するあなたの目の前にやってくるのですから。

いいものの価値を伝え、ずっと大切にしていく文化をつくり、おしゃれになることをあきらめない世の中を実現する。そのために私たちにできることは、数えきれほど目の前に広がっています。

ライター:佐藤 康生

(インタビュー内容は2017年11月の内容です)