
運動会を『人と人がつながると“運”命のエネルギーが“動”き出す。そんな機“会”をたくさん創りたい。』と捉えて活動している運動会屋さん。運動会を通じて、企業や世の中をワクワクさせています。今回は起業する前のお話から、これからの会社のビジョンまで、様々なお話をお伺いしてきました!
米司隆明さん
株式会社運動会屋 代表取締役 CUO(Chief UNDOKAI Officer)。大学卒業後、営業職として、金融業界へと就職。その後、IT系会社へ転職。そののち、2007年にNPO法人を設立した。二社の就業経験をもとに、「自分自身」と「他人・社会」の関係・つながりをスポーツで取り戻そうと運動会屋を設立。笑顔で優しく、面白いお話をしてくださる方でした!
―本日はよろしくお願いいたします。運動会をメインの事業として行われていますが、どんな経緯でこのようなユニークな事業を始めたのですか?
米司: きっかけは、私の社会人1年目の時に遡ります。私が新卒で初めて就いた仕事は、金融の営業職で、週7勤務かつ、きついノルマがある会社でした。その会社では、新卒採用として700人程度採用するのですが、1年後には数十人くらいしか残っておらず、私自身も何のために働いているのか、何のために生きているのかわからないような状態でした。先輩に相談しても、根性がないと言われたり、怒鳴られる。やっとの思いで成果を挙げても、先輩の手柄になってしまったり‥‥、そんな日々の連続で、とても苦しい思いをしました。
―かなり過酷ですね・・。
米司: 過酷でしたね。それでも頑張って、なんとか契約をとり、それをひとつの節目に退社しました。次に入社した会社がIT系の会社だったのですが、その会社は気合と根性で働いていた前の会社と真逆で、シーンとした空気の中、社内での会話はチャットに限定されていました。質問しても答えてくれないような人が多く、私自身にそこまでITスキルがあったわけではなかったのもあり、そのうち陰口を言われるようになってしまいました。 その当時、ちょうどテレビで引きこもりやいじめがニュースとなっていました。そのニュースを見ていると、会社を辞めてきた自分の心境と一致した部分があり、このような世の中や社会に強い違和感を感じました。そこで思い出したのは、学生時代に打ち込んだ部活動のこと。私は野球部でしたが、練習や試合をしている時の仲間との絆が出来た瞬間や感動が、鮮明によみがえってきたんです。人と人がいきいきと競い合い、助け合い、言葉がいらないくらいの信頼関係ができる。なぜ、それを会社や社会ではできないのかと疑問に思い、「スポーツで明るい社会を創ろう」と考え起業に至りました。 立ち上げにあたり、法人格を選択する際、NPOと株式会社で迷ったのですが、私がやりたかったのは「社会課題の解決」だったので、NPO法人としてスタートしました。やがて、運動会が日本独特の文化であることを知ると、海外展開を視野に入れ始めます。NPOに限定せず、事業の幅を広げるために、株式会社を立ち上げました。
―米司さん自身の苦労した経験があったからこそ、今の運動会屋があるのですね。設立してからの印象に残っているエピソードはありますか?
米司: 設立当初、「運動会どうですか?」とひたすら営業をかけていたのですが、断られ続けていました。そんな中、やっと初めての仕事が取れて大喜びしたのも束の間……よく考えたら、運動会のやり方がそもそもわからなかったんです(笑)。
―参加したことはあっても、企画する側はやったことがなかった。
米司: その通り(笑)。そこで、中学校の先生に会い、運動会のやり方を聞き、なんとか開催に間に合わせました。きちんとやるべきことはやって臨んだつもりでしたが、当日は運営もボロボロで計画通りにはいかず、反省点だらけ。それでもお客様はノリノリで、参加してくださったみんなが笑顔になっていたんです。その時、これが私のやりたかったことだと改めて気づかされました。それと同時に、運動会にほれ込んだ瞬間でもありました。
米司: 創業当初は、スタッフがいなくて友達や後輩、親兄弟まで連れ出して運営していた時もありましたし、道具がなくて、ホームセンターで材料を買ってきて手作りしていた時もありました。手作りした道具を置く場所がなくて、ベランダに置いていたら、なんか面白い家があるねと噂になってしまいました。そこでブルーシートで覆ってみたら、今度は事件でもあったのかと不信に思われてしまったこともありましたね(笑)。
―とても大変だったということはわかったのですが、米司さんから聞くと楽しかったことのようにも聞こえますね(笑)。
米司: 実際、とても楽しかったですね。今でも、100%準備したつもりでも必ず当日何かしらのアクシデントが起こるので、それもまた運動会の面白いところだと思っています。 また、これはちょっと余談なのですが、代官山で「Spice&Café FamFam」というカレー屋さんも経営しています。運動会を紹介するためにインドへ何度も通ううちに、スパイスのきいたカレーのとりこになってしまい、カレー屋さんを始めました。スパイスにもそれぞれ個性があり、それらを混ぜると更に新しいものが生まれる、という部分が運動会に似ているなと思っています。是非、食べに来てみてください!
―企業理念について教えてください。
米司: 運動会屋らしく、「選手宣誓」という形でまとめています。「私たちは、スペースマンシップにのっとり」がバリュー、「運動会の価値と潜在性を追求し続け 運動会の先にある未来への可能性にチャレンジし」がミッション、「運動会のようにワクワクする毎日を目指し 運動会のように手を取り合える社会の創造へ向け 世の中を、運動会のように面白くします」をビジョンとしています。 どういうことかというと、運動会自体はイベントなのですが、私たちは運動会を哲学だと捉えています。「誰でもできる」「協力しないといい結果が出ない」「みんな同じゴールを目指す」「勝っても負けてもお互いを尊重する」など、これらの概念そのものが、目指すべき理想の社会の姿であると思っているので、運動会を通じて理想の社会や会社に近づけるよう活動しています。このように、運動会は考えれば考えるほど可能性に満ち溢れたものなので、常に考え、挑戦し続けることをミッションにしています。
―運動会を「人と人がつながると“運”命のエネルギーが“動”き出す。そんな機“会”をたくさん創りたい。」と表現されているように、運動会を手段としてだけではなく、哲学的な考え方で捉えているのですね。このミッション・ビジョン・バリューはどのようなきっかけで考えたのですか?
米司: ミッションができる前は、当日お客さんに喜んでもらうことに全力を尽くしていたのですが、あるお客様に「運動会直後からしばらくは社内の雰囲気もよくなったが、半年・一年経つと、以前の雰囲気に戻ってしまった」というご意見をいただいたんです。私たちは社会や会社をよくするために運動会をやっていますが、ただ開催するだけでは本当の意味でよくはならないのだと気づき、ミッションとビジョンを作りました。
―ミッション・ビジョン・バリューができたことで、会社のスタンスやお客様の反応は変わりましたか?
米司: 運動会後のアンケートで、「会社を辞めたかったが、運動会に参加したことで会社を辞めるのをやめました。」という方がいてとても嬉しくなりました。運動会をしている時は、年齢や性別、上下関係もないフラットな状態なので、仕事の時では見られない一面も見られるのではないのかと思います。このような人が増えて、一人でも多くの人がワクワクする毎日を送れる社会になれば良いなと思うようになり、運動会が終わった後に組織がどう良くなるかも大事にしながら活動しています。
―その反応はとても嬉しいですね。お話を聞いていると、運動会をすることには、たくさんの価値があるように感じました。
米司: 運動会をすることで、健康増進もさながら、集団で物事に取り組む力が付きます。「和をもって尊しとなす」といいますが、調和を重んじる日本人の精神は、運動会教育の賜物ではないかと思っています。誰でも平等に、楽しみながらこのような力や精神が身につくのは、運動会ならではの素晴らしい価値ではないでしょうか。
―今後の事業展開について教えてください。
米司: まずは、今取り組んでいるオンライン運動会を広めていきたいです。「運動会なんだから、直接会わないとできない」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。Zoomなどのオンラインツールを使用すれば、オンラインでも運動会を楽しむことができるんです。先ほど述べた、「誰でもできる」「協力しないといい結果が出ない」「みんな同じゴールを目指す」「勝っても負けてもお互いを尊重する」といった要素を入れ、腕立て伏せストレッチなど、スポーツ要素も取り入れれば、立派な運動会です。 運動会屋では、オンラインならではの面白種目やチャット機能を使った企画などを日々開発しているので、盛り上がること間違いなしです。 録画したりチャットを保存したりすれば、後で見返すことも可能ですし、「オンライン上のほうがコメントしやすい」という人もいます。仕事なども、オンラインとオフラインでそれぞれいい点がありますよね。同じように、オンライン運動会にも、オンラインならではのいい点があるんです。 現在リモートワークが主流になり、今後はより会社の人を知る機会が減ってしまうので、運動会を通じて関係をよくするきっかけを作れたらいいなと思っています。
―オンライン運動会…!面白いですね。まさに今の時代に必要な取り組みかもしれません。他に力を入れていきたいことはありますか?
米司: 海外事業にも力を入れていきたいですね。海外でも運動会の評判はとてもよく、初めは、ご縁があった国から開催していたのですが、今では様々な地域で開催できるようにまでなっています。どこの国でも課題があるのですが、その課題を解決するきっかけを作れればという想いで活動しています。昨年、ルワンダ共和国の学校で運動会を開催しましたが、勉強の成績が上がったという報告がありました。 日本での運動会はただのイベントと思っている人も多いですが、海外で「UNDOKAI」という言葉を使い運動会をすることで、ただのイベントではなく、誰もが協力して同じゴールを目指すものだと、日本の文化として定着すると思うんです。そしていつか「UNDOKAI」という言葉が、文化や考え方を表す言葉として逆輸入されれば、日本ももっと、理想の世の中に近づいていくと思うんです。「OMOTENASHI」や「BUSHIDO」みたいなイメージですね。
―これから事業を進めていくうえで、どんな人と働きたいですか?
米司: 情熱がある人がいいです。去年入社した新卒社員は、学生時代にアルバイトとして手伝ってくれていました。一緒に運動会を運営していると、当日しか参加していないのにそれぞれの運動会すべてに感動して泣けてきたと言っていましたね。そのような情熱のある方と一緒に働きたいです。
―自分のことではないのに感動してしまうことも、運動会の良さの一つですね。今日はとても面白い話をありがとうございました!私も、また運動会がしたくなるようなお話が聞けて楽しかったです!
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