山角や/おむすびで人と人をむすび、 相手を想う気持ちを育てたい。

山角や

おむすびで人と人をむすび、 相手を想う気持ちを育てたい。

店舗を持たず、その時々のニーズに合わせた手段で、お米の美味しさや皆で食べる楽しさを世の中に共有し続けている山角やさん。実はまだ企業として設立された組織ではありませんが、のちのちは法人化も考えているとのこと。現在は、メンバーそれぞれが本業の傍ら活動されています。今回は、そんな山角やを立ち上げた水口さんに、山角やの実体やこだわり、今後の展開についてお話を伺いました!

山角や 水口 拓也さんさん

水口 拓也さん
2003年 京都造形芸術大学 彫刻コース卒業。 本業(デザイン会社でディレクターとして様々なプロジェクトの企画・進行を手がける)の傍ら、実店舗がない出張専門、オーダーメイドのおむすび屋『山角や』を立ち上げる。 "おむすびの魅力”と"食の楽しさ"を世の中に浸透させるべく、様々なアプローチ方法で活動を展開中。

『山角や』
それは実体が無く、ふわっとしている

―本日はよろしくお願い致します!まずは「山角や」という名前が気になったのですが、由来は何ですか?

水口:

おむすびの形って三角形のように見えますが、山を模した形なのではないか、と言われていているんです。日本では古くから山に信仰があって、お米を収穫した際、神様にお供えするときに山を模した形にしたらしいんですね。それがおむすびの始まりとも言われています。

当初は僕たちも「三角や」と名乗っていたのですが、そのような由来や起源を知ったのもあって「山角や」に変更しました。今でも「三角やさん」ってよく間違えられるんですけどね(笑)。普通の名前じゃないだからこそ間違えられるんだろうし、癖やオリジナリティも出て丁度いいんじゃないかなって思っています。

―そうなんですね!おむすびの三角形は山の形だったんですね。

水口:

はい。また、「おにぎり」ではなく「おむすび」と言っているのにも理由があって、人と人を結ぶ、人と「こと」を結ぶといった想いがこめられています。「おにぎり」から「おむすび」に呼び方を変えてから、取り組み方やまわりとの関係性が変わっていって、言葉の力って凄いなって思いましたね。

―なるほど。いま、山角やさんはどのような活動をされているんですか?

水口:

山角やはふわっとしてるんですよ。ふわっとさせている、といってもいいかもしれません。最初はおむすびをつくるだけの、いわゆるおむすび屋でした。でも、やっているうちにメンバーそれぞれにやりたいことがでてきて、おむすびに限定する必要もないなと思って、僕や関わる人達がやりたいことを実現できるような場所にできたらいいなと思ってやっています。

―あえて活動内容を限定していないんですね。

水口:

はい。ただ、活動の根本的な考え方というのはあります。それは、「美味しいね」って思うことを、より沢山の人と共有したい、そういう時間や場所を増やしていきたい、ということです。そのために主な活動として、ワークショップやケータリング、出店、出店サポート講座を行っています。

例えばある会社のイベントで、おむすびや和食を出したい、と依頼がきたら、誰に対してどんなふうに提供するのかを話し合って、そのイベントに最適なメニューを一番美味しい状態で提供する、といった感じです。ただ、自分たちがご飯(お米)を得意とするところでもあるので、おむすびやお寿司をメインにつくることが多いです。

メンバーは固定しない。1人でも、必要なら100人にでもなれる。

―普段は何人くらいで活動されているのですか?

水口:

山角やは正式なメンバーは決まっていなくて、イベントや出店があるたびに助っ人を呼んでいます。助っ人のみんなは、それぞれ好きなことをやっていて、その「好きなこと」の延長線上に山角やがあるんです。だから快く引き受けてくれるし、僕も彼らと一緒に色々できて楽しいんです。それぞれのやりたいこと、だけど1人でできないことをみんなでやるためのユニットが山角やっていう感じですね。

内容に沿って手伝って欲しい人に声をかけて、お願いをします。お料理のサポートをしてもらう場合もあれば、お料理に合うお茶やお酒を用意してもらったりする場合もあります。その時々で色んな人とコラボしながら、食の楽しさを提供していく、というスタンスでやっています。

―その助っ人、というのはどういった繋がりの方達がいるのですか?

水口:

例えば、イベントやマーケットに出店している人って、お店(実店舗)を持ってなかったり、他に仕事をやりながら活動していたり、そういうケースがけっこう多いんです。「働く」ことと「やりたいこと」を繋げている人もいるけれど、そこを分けてる人もいたりして、仕事にしてるしてない関係なく「やりたいこと」で集まっている人が僕の周りには沢山いるんです。

あと、そういう人たちが集まると話が早いんですよね。「今度一緒になんかやろう」って言ってから実現するまでが。

普通に生活していたら出会いもしなかった人たちと力を合わせて何かをやるというのがすごく楽しいんです。職種も立場も全然違うけど、根本的な考え方や想いは近い人がけっこういるのも面白いですね。1人で全部やることもありますが、それにはやっぱり限界があるので、そういうときに助け合える仲間がいて、力を合わせればどんなことでもできると思っています。

おむすびからはじまるコミュニケーション。

―結びつかなそうでも実は結びつく、というまさに「おむすび」の言葉の力を感じますね。

水口:

そうですね。誰と誰が結びつきそうかって意外と分からないんです。予想外なもの同士が結びついたりする。ご飯出して欲しいって言われて行ってみたら、こんな世界あるんだと思うような自分が知りも出会いもしなかった人達と出会える。だからそういう意味では他力本願というか、おむすびがそんなきっかけを与えてくれる、不思議な力に乗っかっているというような感覚ですね。

―おむすびにそんな力があるんですね。

水口:

おむすびって日本人にとってのソウルフードですよね。日本人なら誰でも小さい頃に食べたおむすびがあって、どういう形とかどういう包み方とか白ご飯なのか混ぜご飯なのか、温かいのかお弁当なのかアルミホイルに包んであったのか、そういう原体験があると思うんです。おむすびを食べるとそういうことを思い出すんですかね。その人のおむすびの思い出を聞くことができて、それがすごく面白いです。

おむすびをシェアしてるからこそ、そういう話が出来るし、日本人としてのアイデンティティを感じます。

―おむすびを提供するときに工夫していることはありますか?

水口:

その人にピッタリのおむすびを提供するようにしています。段々と、この人はこういうおむすび好きそうだな、というのもわかってくるようになってきました。みんな、おいしいものを前にすると、食べたい欲求で丸裸になるんですよ(笑)。素のその人が見えるので、初対面の人でもなんとなく人となりがわかるんです。食材だけでなく、大きさや塩加減もその人に合ったものを出す、ということを大切にしています。

―今まで結んだおむすびの中で思い出深いものはありますか?

水口:

どれも本当に思い出深いので決められないんですけど、特に子どもたちの反応はすごく良いですね。子どもたちの場合はあまり食べたことの無いものは選ばないことが多いです。みんな迷わず塩むすびを選びますね。

―子どもの方が好奇心があっていろんな食材にチャレンジしそうですが(笑)。

水口:

そうなんですよね(笑)。余分なものは入れて欲しくない、というのがあるのか、ごはんそのものが好きだからなんじゃないかな、とも思います。塩むすびを注文された時は、この人はお米を味わいたいんだなって、1番気をつかいますね。注文の仕方や内容によってその人自身の興味が顕になって面白いし、これを続けていったら、新しい形のコミュニケーションができあがるのではないかと思っています。

世の中には素晴らしいものがたくさんあると知った大学時代。

―このような活動をやってみようと思ったきっかけは何だったのですか?

水口:

服が好きというのと、アートに興味を持っていた姉の影響もあり、芸術系の大学へ進学し、彫刻を学んでいました。とにかく素材と接することが楽しくて、ただ自分の表現を追究していたんですが、ある時先生に言われたんです。「自分の作品を磨くのは良いけど、もう少し周りも見た方がいいよ』と。それまでは周りがどんな作品を作っているのかなんて全然興味なかったんですけど、いざ見てみたら面白かったんですよ。素晴らしい表現をしている人は世の中にはたくさんいて、自分の目指したい先の表現をしている人もいると気づきました。そういうのを経て、造形する1人になるよりも、それを伝えたり活かしたりできる人になれたらいいな、と思うようになっていったんです。

大学院の頃にはアートマネジメントとか、イベントのオーガナイズとかに興味を持つようになって、実際にそういうイベントの企画や運営をやっていました。今の仕事でも、ディレクターとしてクリエイティブの全体が俯瞰できる立場で関わっています。その何が面白いのかというと、デザイナーやカメラマン、スタイリストが一番いいパフォーマンスを発揮できる環境を作ることなんですよね。例えば普段はあまり接点のないクリエイター同士でも、テーマに合わせて企画を一緒にやってみたら面白くなるのではないか、とか。

―なるほど。大学の先生に言われたことがきっかけで、人と人を結びつけることに面白さを見出すようになったんですね。

水口:

そうですね。それが今の山角やの活動にもつながっていると思います。

「本業の話ですが、ロケハンや撮影の現場におむすびを持っていくと、みなすごく喜んでくれてワッハッハって声が響くような賑やかな現場になるんですよ。豪華なお弁当を買っていくよりも、おむすびを結んでいくほうが、スタッフのモチベーションや団結力が上がって、その後のパフォーマンスにも直結します。やっぱりおむすびの力ってすごいなと思いますね(笑)」
「本業の話ですが、ロケハンや撮影の現場におむすびを持っていくと、みなすごく喜んでくれてワッハッハって声が響くような賑やかな現場になるんですよ。豪華なお弁当を買っていくよりも、おむすびを結んでいくほうが、スタッフのモチベーションや団結力が上がって、その後のパフォーマンスにも直結します。やっぱりおむすびの力ってすごいなと思いますね(笑)」

美味しいもので繋がる体験を日常的に。

―おむすびを通して様々な活動を行っている山角やさんですが、いちばん提供したい価値はなんでしょうか?

水口:

「美味しいもので繋がる体験」ですね。一人で食事をとることもあると思いますが、みんなで美味しいご飯を囲んだ時の体験って何物にも変えがたいですよね。美味しいご飯が、そこにいる人たちの関係性をよりよいものにしてくれてるんじゃないかと思うんです。

―活動の中で絶対にゆずれないこだわりはありますか?

水口:

2つあります。まず1つ目は、出来たての美味しさを味わってもらうこと。寝かせたあとも美味しいものもあると思うんですけど、僕がつくっているのは出来たてが一番美味しいおむすび。温かいうちに、1秒でも早く食べて欲しいんです。その場でつくってその場で食べてもらうことで、リアルなコミュニケーションが生まれますからね。だから、いかに出来たてを食べてもらうかの環境を整えるために、ケータリングや出店をする時には、なるべく企画段階からしっかり入って、イベント全体の流れを考えて提供します。

2つ目は、「その人のために」という気持ちを込めるということ。「その人のために」っていう気持ちが入ると料理はすごく美味しくなるんです。一人一人からオーダーを受けて、その人の顔を見ながらおむすびをつくっているのは、とても大切なポイントです。

―出来たての美味しさと、相手を想う気持ち、ですね。確かにこの2つがあれば、おむすびを囲む人々の関係性がよくなっていく気がしますね!

水口:

最近は、おむすび一個の売値をお客さんに委ねてしまって、気持ちが伝わった分だけ箱に入れてください、といった投げ銭式でやるときもあります。ただ、「値段決まってないんです」って言うと「私、試されてる?」って思う人もいて、なかなか難しい方法ではあるのですが…。

―海外の路上パフォーマンスとかで感動した分だけ払う、という考え方に似ていますね。おむすびという商品を売ってるというよりも関係性を売っているという感じなのでしょうか?

水口:

その通りです。おむすびそのものに対しての対価ではなく、気持ちに対する消費が広まればいいなと思います。そうすれば、「安い!ラッキー!」という感情よりももっと深い感情が生まれ、心も豊かになると思うんです。いまのところは、おむすびがいちばんそれを実現できる手段だと思っています。

―今後の展望や、考えている試みがあれば教えてください。

水口:

今、おむすびがブームなんですよ。おむすび屋さんも増えたりしていて。それ自体はいいことではあるんですけど、ブームとは関係なく、おむすびが日常に深く根付いて欲しいと思っています。そのための土俵作りをしたいですね。

具体的に注力していきたい取り組みは、おむすび屋のための「おむすび講座」です。一緒にメニュー開発をしたり、これからお店を出したい人には、おいしいお米の炊き方やおむすびのむすび方をレクチャーしたり。「むすび手」となる人のそれぞれのケースに合わせて、精神的なことも技術的なことも、おむすびやそれに関わる様々なことを習得してもらうための機会をつくっていきたいです。

また、家庭でも美味しいおむすびを作ってもらいたいという想いがあるので、一般の方向けにお米の炊き方やおむすびの結び方のワークショップを行ったり、子ども向けのイベントでお米を育てて稲刈り体験もしたあとで、直火で炊いたおむすびを食べるようなことを行ったり、やりたいことはたくさんありますね。

―確かに、私も普段は無意識に食べていますが、お米やおむすびのことをもっと知れる企画があれば楽しそうです!

水口:

日本のソウルフードであるおむすびが、これからも日本人の心とともにあることを願って、いろんな企画を考えていきたいです。

それと、どんな企画をやるかも大事なのですが、支え合いの精神を持つとか、まずは相手を信用してみるとか、そういったスタンス面も大事にしていきたいですね。日々の暮らしの中で、仕事の中で、そういうスタンス面を鍛える場はたくさんあります。人と人を結ぶのが山角やなので、そういう思いを常に持って行動していきたいです。

京都に在住の水口さんですが、インタビューのお願いをしたところ、東京に仕事でいらっしゃった際に時間をつくっていただきました。お忙しい中お受けいただきありがとうございました!
京都に在住の水口さんですが、インタビューのお願いをしたところ、東京に仕事でいらっしゃった際に時間をつくっていただきました。お忙しい中お受けいただきありがとうございました!

【編集部レポート】イベントに参加してきました!

―取材させていただいた後日、水口さんより都内のイベントに参加されるとのご連絡をいただき、Visions Lab 編集部の趙(ちょう)が見学してまいりました!

―農林水産省の補助事業として開催された、株式会社日本旅行さま主催の「コメ研究会」。
日本からはお米の輸出事業者3社、アメリカからは寿司レストランなどを経営するレストランオーナーたちが参加し、日本米の魅力を感じてもらうイベントです。イベントの最後に、水口さんが「おむすびパフォーマンス」を披露し会場を盛り上げました。

まずは、日本米の特徴やアメリカ産米との違いについての講演がありました。
まずは、日本米の特徴やアメリカ産米との違いについての講演がありました。

熱心にメモをとる方も。
熱心にメモをとる方も。

仕込みも完了し、いよいよパフォーマンス開始!
仕込みも完了し、いよいよパフォーマンス開始!

いろんな具材に、みなさん興味津々です。
いろんな具材に、みなさん興味津々です。

なぜ「おにぎり」ではなく「おむすび」なのか、水口さんが何を大切にしているのかを話します。
なぜ「おにぎり」ではなく「おむすび」なのか、水口さんが何を大切にしているのかを話します。

この日もやはり、一人一人と対話しながら、その人に合ったおむすびをむすんでいました。
この日もやはり、一人一人と対話しながら、その人に合ったおむすびをむすんでいました。

昆布や梅など一般的な具材から、紅生姜やカマンベールチーズなどの変わり種も。「どれもおいしい」と、中には4つも食べている人もいました(笑)。ちなみに趙は、鮭×バジルのおむすびをいただきましたよ。
昆布や梅など一般的な具材から、紅生姜やカマンベールチーズなどの変わり種も。「どれもおいしい」と、中には4つも食べている人もいました(笑)。ちなみに趙は、鮭×バジルのおむすびをいただきましたよ。

一つ一つ心を込めてむすび、一人一人に丁寧に手渡しする水口さんの姿を見て、「美味しいものでつながる喜び」と「相手を想う気持ち」が伝わってきました。おむすびも美味しかったです、ありがとうございました!また食べたい...!
一つ一つ心を込めてむすび、一人一人に丁寧に手渡しする水口さんの姿を見て、「美味しいものでつながる喜び」と「相手を想う気持ち」が伝わってきました。おむすびも美味しかったです、ありがとうございました!また食べたい...!

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Company Profile

社名
山角や
代表者
水口 拓也

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