ナカモ株式会社/日本人の伝統食を未来へつなぐ、創業190年の味噌屋さん。

ナカモ株式会社

日本人の伝統食を未来へつなぐ、創業190年の味噌屋さん。

今や愛知県の名物になっている調理味噌、「つけてみそかけてみそ」。今回はその製造・販売を手掛けているナカモ株式会社の代表・杉本 達哉さんに味噌づくりに対する思い、醸造文化についての考えについてお伺いしてきました!

ナカモ株式会社 杉本達哉さんさん

杉本達哉さん
約190年の歴史をもつ、ナカモ株式会社の代表取締役社長。7代目として、味噌の文化を次世代へ受け継ぐべく、新しい味噌の形を考案していらっしゃいます。

味の秘密は、目に見えない2種類の「麹菌」。

―早速ですが、具体的な事業について教えてください。

杉本:

うちはその名の通り味噌屋ですね。味噌の醸造をして、加工したものの食品の製造をしています。ただ加工するだけではなく、原材料からこだわっているんです。例えば、名古屋味噌という商品は、愛知県産のフクユタカという大豆を100%使用しています。「地元の食材を食べて地元の人間になろう」というコンセプトで商品を展開することもあります。

*これはフクユタカではありませんが、仕込みに使われる大豆も見せていただきました。
*これはフクユタカではありませんが、仕込みに使われる大豆も見せていただきました。

*工場をご案内してくださったのは、工場長の中村剛さんです。ありがとうございました!
*工場をご案内してくださったのは、工場長の中村剛さんです。ありがとうございました!

―愛知県産のものづくりにも力を入れているんですね。県内の他の味噌メーカーさんと比べて、ナカモさんならではの特徴はありますか?

杉本:

特徴としては白味噌と赤味噌の2種類をつくっていることですかね。愛知県ではあまりないんです。味噌は大きく分けると4種類。米味噌(白)、豆味噌(赤)、麦味噌、それをまぜてつくる調合味噌の4種類があります。ナカモでは豆味噌と米味噌をつくっていて、商品によっては調合味噌にもしています。

*こちらは米麹。お米で麹菌を育てたもので、米味噌(白味噌)に使われます。
*こちらは米麹。お米で麹菌を育てたもので、米味噌(白味噌)に使われます。

―2種類の味噌をつくることって、難しくないですか?

杉本:

つくること自体はそれほど難しくはないんです。ただ、味噌の発酵に欠かせない「麹菌」の管理が大変ですね。“米味噌”にはお米で培養した麹菌を、“豆味噌”には豆で培養した麹菌を使っていますが、菌は目に見えないので、管理には気をつけています。ただ、正直に打ち明けると、100%麹菌を分けるのは難しく、わずかに混ざっているかもしれませんね。

―混ざっても問題ないんですか!?

杉本:

はい。問題ありません。むしろ、そのわずかな混ざりが「ナカモの味」をつくり出しているんです。蔵ごとにある独特の癖を「蔵癖(くらぐせ)」といいますが、どのメーカーさんもそれぞれの「蔵癖」を持っているんですよ。

―「蔵癖」がメーカーごとの特徴になっているんですね。

杉本:

味噌づくりの工程には大きな差はありませんが、それぞれの蔵ごとに独特の手法や癖があります。結果的にそれが味の違いになっている。だから会社ごとにみんな特別なんですよ。それぞれの味があって、優劣では決められないんです。例えば愛知県の他社さんのお味噌と、ナカモの味噌を比べて、どちらが優れているか…という話ではなく、それぞれの味があるだけ。同じ豆味噌でも、それぞれ個性があるんですよ。

―たしかにそうですね。優劣ではなく、好みかもしれないです。

杉本:

長年守ってきたつくり方が、ナカモの味として受け入れられ、お客様に愛されてきました。2種類の味噌から生まれる「蔵癖」は、今後も続けていきますよ。

―「目に見えないので、もしかしたら影響している」とおっしゃっていましたが、ナカモの味を出すためには、2種類の味噌づくりが欠かせないのでしょうか。

杉本:

やり方を変えようと思えば、簡単に変えることもできます。しかし、味噌はできあがるまで時間がかかる商品なので、いま仕込み方法を変えたら、発酵させ結果がわかるのは数年後ということもあります。一気にやり方を変えてしまうと、数年後ナカモの味ではなくなっているかもしれない。しかも、どこがよかったか、いけなかったか、明確な原因の特定が難しいんです。だから醸造の難しいところは「常に変わらない味をつくる」こと。お客様に愛されている「変わらない味」を、毎年提供し続けることも私たちの大切な仕事のひとつです。

*約5tも入る木桶。長いときは5年ほど寝かせ熟成させることも。
*約5tも入る木桶。長いときは5年ほど寝かせ熟成させることも。

使いやすさにこだわれば、味噌はもっと身近になる。

―ナカモ味噌さんといえば「つけてみそかけてみそ」ですよね。かなり個性的な商品だと思うんですが、どういう経緯で開発されたんですか?

杉本:

開発のきっかけは20年以上前です。愛知県には田楽味噌、味噌カツ、みそおでん等々…。それぞれの味噌料理専用の味噌があったんですよ。ただ袋に入ってて使いづらいし、毎日同じ味噌を使う料理ばかり食べないじゃないですか。ご家庭で週に何回も味噌カツ食べませんよね?

―うーん…食べませんね。

杉本:

でしょう。そんな事情もあって、味噌の売れ行きが低迷してしまう時期がありました。そこで開発されたのが『つけてみそかけてみそ』です。開発のポイントは2つあります。

まず、どの料理にも合う調味料をつくること。名古屋の味噌料理の味は、根本的には似ているんです。だったら、1本で万能な味噌をつくればいい!と。

次に、使い勝手のよさです。当時の社長が「卓上醤油」はあるけど「卓上味噌」はないよね…と気がつきました。万能調味料にするなら、いつでも使いやすいほうがいいだろうと。そんな観点から、独自の味とチューブ型の形ができあがりました。

*「つけてみそかけてみそ」特徴的なチューブ型に、おいしい味噌ダレが入っています。
*「つけてみそかけてみそ」特徴的なチューブ型に、おいしい味噌ダレが入っています。

―形にこだわりはあるんですか?

杉本:

結果的にチューブの形がこだわりになっていますが、当時「何かないか」と探していた時にマヨネーズの容器がたまたま目についたんです。「これなら良さそう」と思い、あの形に落ち着きました。他社さんは主にゼリー飲料のような四角い形が多いんです。会社の規模を考えると自分たちのやり方を「えいやっ」と変えるのは難しくて、そのままチューブ型を続けたらいつの間にか特徴になっていましたね。

―開発される際に苦労された点などはありますか?

杉本:

たれの充填ですね。味噌をタレに加工するというのは、やろうと思えばできちゃうんですよ。ただ、味噌は独特の粘度があり、充填機械の調整が難しかったです。たれ化した味噌は粘りがあって、切れないのに跳ねたり、ノズルに付いたり…。技術的に新しいものに挑戦すると、見えないところで苦労するんですよね。

*「つけてみそかけてみそ」の充填機械。リズムよくきれいに味噌ダレが充填されていきます。
*「つけてみそかけてみそ」の充填機械。リズムよくきれいに味噌ダレが充填されていきます。

―他にも、ナカモさんならではの開発とかあるんでしょうか?

杉本:

いま、スーパーにならんでいる味噌ってプラスチックのカップに入っていますよね?あのプラスチックのカップに味噌を入れ始めたのも、実はうちなんです。会長(前社長)が、海外でマーガリンが入った容器を見て、発想を得たと聞いています。

―そうだったんですね!初めて知りました。

杉本:

あとは、小分けできるお弁当にいれるような形の味噌は僕が初めて企画した商品です。業界ではすごくポップなのが衝撃的で、びっくりされたんですよ。人気に波があって、あるとき販売量を少なくしたら、お客さまから「つくってもらえなくなっちゃったんですか…?」って電話をいただいたんですよ。それだけ気に入ってくださったお客様がいたんです。だからその後、三食入りの「カレンダースタイル」に改良したら、少しづつ色々なスーパーに置かれて、お客さまに手に取ってもらえるようになりました。

―やっぱり、使い勝手が良い商品は必要なんでしょうか?

杉本:

メインの商品に比べたら、圧倒的に少ない売上ですが、使い勝手を考えると絶対に置いたほうがいいんですよ。小分け商品は、スペースをとらずにさっと使える。小さな商品だけど、ニーズはちゃんとあるんです。

―使い勝手にもこだわってらっしゃるんですね。

杉本:

そうですね。やっぱり、日常での使いやすさにはこだわっています。味噌の使いやすさを改良することが、1番のお客さまの課題解決だと思うので、少しでも我々がお客さまに近づいていく、という感覚はあります。

受け継いでいくのは「日本人」のエレメント

―お話を聞いていると、様々な挑戦的な商品を開発されていますね。その背景にはどんな想いがあるのでしょうか。

杉本:

ビジョンのような形で明確に打ち出してはいませんが、ナカモとしての目的はよく考えます。自分たちは何のために仕事をしているのか、自分たちの会社がやっていること、これからやるべきこと…。そういったことを考えたときに「伝統を守りながら新しいことへ挑戦していこう」という目標ができたんです。さらに、本当の目的とは何?と突き詰めていくと、「醸造文化を次世代に残すこと」ですね。

―なぜ「醸造文化を次世代に残すこと」が目的になったんでしょうか?

杉本:

発酵食品って、昔から食べられているものじゃないですか。それを受け継いでいかなければいけない、という気持ちがあるんです。

なんで受け継いでいかなきゃいけないかというと、私は、発酵食品という文化が日本人をつくっていると思うからです。日本人って、生まれたときから日本人ではなく環境や様々な要素があって日本人になっていくんです。その一つの要素が食文化。日本人が昔から食べているのはお味噌汁ですよね。醸造食品をつくる我々は、日本の文化を守っていかなきゃいけないし、それを食べ続けていきたいと思うんです。

*真心を込めてつくられたお味噌。工場の中はお豆のいい香りがしました。
*真心を込めてつくられたお味噌。工場の中はお豆のいい香りがしました。

日本の醸造文化を守るために、常に時代を先んじる。

―ナカモさんが醸造文化を残すために大切にしていることはありますか?

杉本:

「不易流行」の考え方を大事にすることですよ。変えるべきものは変えて、変えないものは変えない。その考え方を続けていくこと。変えないものは味噌の味とか、つくり方とかですね。変えたとしてもゆっくりと品質をあげていく。大きな基本的なつくり方は変えずに「醸造業として、長い時間をかけて味噌をつくるんだ」という考え方は変えないでおく。変えていくものは打ち出し方。お客さんへの提供の仕方は、時代によって変えていかなければならない。「市場に対して対応すること」ですね。市場の変化に適応する、もしくは先んじる。自分たちのやり方がその時々で支持されるかをちゃんと判断することが全てだと思います。

―そのために、具体的にどんな取り組みをされていますか?

杉本:

「味噌文化を続けることを前提にして考える」ですかね。不易の部分は、味の品質の維持です。これはいわばどのメーカーさんもやっています。だからうちは、「時代は変わっていくとき、何をしなきゃいけないの?」「今の食生活は?10年後はどうしよう?」…といった感じで、ちょっとずつ先を読んでいくんです。

商品づくりは特にそうです。お客さまの近いところで、使いやすいものを。料理する時間は年々減ってきているし、食器を洗うのは嫌だろうし…。だから容器付の商品を考えているんです。取り組みというわけではないですが、2つの方向から考えることを大切にしています。「目的に対してどう行動するか」ということと「その行動が目的に合っているか」の二つを確認していくことが重要です。

特別に何かやっているわけではなく、いまやっていることが10年後20年後に結びつくか、日々検証していってます。いまの世の中を眺めてどうなって行くのかを予想して、じゃあこうしていこうか、と。

*味噌は形を変え、お客様のところへ運ばれていきます。
*味噌は形を変え、お客様のところへ運ばれていきます。

―なるほど。

杉本:

今の市場にも、未来を考えることが重要と言えます。今、日本での市場のキャパシティはどんどん狭くなっていってるんです。じゃあ、新たな市場を求めて海外に進出しよう、と。

―海外ですか!?

杉本:

ええ。手探りの状態ですが、数年前から徐々に進めていっています。

今はアメリカに市場を開拓しにいってますね。海外で味噌を広めるにはいいヒントがたくさんあると思うんです。カレーライスやラーメンも、もとは日本食じゃないのに今や日本食と呼べるオリジナリティがありますよね。味噌はその逆ができたら成功かな、と。「向こうでも味噌汁はあるけど、似て非なるものだよね」「いいじゃんそれで!」と言われるくらい浸透するのが理想です。

そういう形で、日本の発酵の伝統がちゃんと続いていくのは、僕はアリだと思います。そのなかでナカモのつくっていたものが続いていけば良いな、と。

―素敵ですね。

杉本:

やっぱり重要なのが、そのために各世代が次の世代のことを考えていくことですよね。

どうやって次の世代に残すのか、残すために何をすればいいのか?それは時代と共に変わるから、ちゃんとその世代の人たちが次の世代のことを考えていく。やっぱり、ベテランの人の意見は大事だと思います。でも、未来をつくっていくのは若い世代なんです。

だとすれば、若い人たちが本当に10年後にどうしたいか、20年後にどうなってるかを今一度考えてもらう機会をつくらなければいけないかな、と。今いる若い社員に「10年後この会社にいたとしたらどうなってなきゃいけないと思う?」とか、聞いてみたいですね。

―若手の意見も大切にされているんですね!最後に、未来に向けてどんな仲間と一緒に働きたいか教えてください。

杉本:

常に色々なものを見て、それを行動に移せる人ですね。伝統をつないでいくためにも、身の回りから、世の中のことまで、状況が変わっていくのに目を向けて、自分で行動できる人が必要だと思っています。もちろん個人の能力を重視するだけではなく、全員が考えていかないといけない。会社としては、そういう雰囲気をつくって行くことが大事だな、と思いますね。

―本日はありがとうございました!

*ナカモさんの味噌は将来どんな形になっていくのでしょうか…。
*ナカモさんの味噌は将来どんな形になっていくのでしょうか…。

〜編集後記〜
いつも何気なく食卓に置いてある「つけてみそかけてみそ」。その「何気なく」に、日本人の食文化に対する考え、醸造文化への思いがあるなんて考えてもみませんでした。伝統的な食品を扱う会社だからこそ、現在と未来をしっかりと見据えて「発酵食品」を残していこうという姿勢がとても印象に残りました。味噌を残す為に自ら積極的に動いていく姿勢が、長年お客様から愛されている秘訣だなと感じます。次世代を担う人間として、「何をしなければいけないか」を考えさせられました。

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Company Profile

社名
ナカモ株式会社
設立
1830年
代表者
代表取締役社長 杉本達哉
資本金
1500万円
従業員数
41名 *2020年1月現在
事業内容
豆みそ 米みそ 調合みそ FD 調理みその製造販売
本社住所
〒452-0025 愛知県清須市西枇杷島町十軒裏3番地
会社URL
http://nakamo.co.jp/index.html

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