株式会社マサヒロ/みんなに好かれなくていい。<br>誰かに愛される包丁をつくろう。

株式会社マサヒロ

みんなに好かれなくていい。
誰かに愛される包丁をつくろう。

かつて鍛冶屋の里だった岐阜県関市。今では刃物の町として有名です。

今回はそんな関市を代表する包丁メーカー、株式会社マサヒロの代表、服部浩司さんに包丁作りに対する想いやこだわりについてお聞きしました!!

株式会社マサヒロ 服部浩司さんさん

服部浩司さん
約70年の歴史をもつ、株式会社マサヒロの代表取締役社長。三代目として「本物の包丁」をつくるために、日々試行錯誤しながらより良い包丁をつくり続けていらっしゃいます。

切れ味の秘訣。それは「素材」にある。

―まずはマサヒロさんの事業の内容から教えてください。

服部:

包丁の生産と問屋さんへの販売を行っています。なので、包丁づくり一筋ですね。

―他製品をつくっているメーカーも増えてきていますが、包丁だけにこだわる理由は何ですか?


初代や先代が「ハサミもつくってみるか」と挑戦したことはあったんですけど、二人ともできなかったみたいです。

ハサミと包丁はノウハウが違うんですよ。ハサミはかみ合わせを工夫して切れるようにするものですが、包丁は一枚の刃を磨き上げて切れるようにするものなので。そもそもノウハウが違うわけです。

だからうちはやっぱり、一枚の刃物の質を追求していく企業なんだと思います。

―なるほど。ハサミとは強みがちがうという事ですね!マサヒロさんの強みはなんですか?


包丁づくりのノウハウですね。安い包丁と高い包丁、それぞれニーズがあるのでどちらが正解という訳ではない。その上で、当社は比較的高い包丁を、金額に見合った質でつくっています。毎日研がなくても、切れ味が落ちないくらいの質です。そのためのノウハウが強みですね。

―例えばどんなノウハウでしょうか?


材料を硬くしてるんです。ただし、硬い材料を使うと加工が大変で、形成や研磨の技術も必要になってくるんですよ。

難易度の高い材料で一つひとつ手づくりを続けてきたので、独自の加工法がノウハウになりました。

―他にもこだわりはありますか?


いいものをつくるために、自分達の目の届く範囲でつくっていますね。『本物の包丁』をつくりたいので、自社工場周辺で完結しています。きちんとした工程でつくられているか把握して、自分達の製品に責任を持てるようにしたいんですよ。

材料の鋼材から切り出した包丁。熱処理、研削加工など様々な工程を経て1本の包丁ができあがります。
材料の鋼材から切り出した包丁。熱処理、研削加工など様々な工程を経て1本の包丁ができあがります。

工場を案内してくださったのは、営業部の冨永さん。丁寧なご説明ありがとうございました!
工場を案内してくださったのは、営業部の冨永さん。丁寧なご説明ありがとうございました!

焼入れの工程。1050℃まで加熱された鋼を、油につけることで急冷し、硬度を高めます。
焼入れの工程。1050℃まで加熱された鋼を、油につけることで急冷し、硬度を高めます。

マサヒロが誇る「本物の包丁」とは。

―いま、「本物の包丁」とおっしゃっていましたが、マサヒロさんにとって本物の包丁とはどんなものでしょう?


長くよく切れる包丁ですね。切れる状態が長持ちするためには、いい材料で、高い技術によって自分たちが満足のいく物づくりをしなきゃいけないと思っています。

―どうして長くよく切れることが大切なのでしょうか?


日本人の考えかたが背景にあると思います。ヨーロッパの人は、包丁が切れなくなればヤスリ棒で研ぐ、だから多少切れ味が悪くてもいいという考え方でした。日本人はいい物を長く使うという文化、つまり、毎日手入れをしなくても切れ味が続く包丁がいいという考え方なんですね。これもどちらかが正しいという訳ではなく違いがあっただけなんです。

僕たちマサヒロは、日本らしい考え方を大切にしたい。だからよく切れて長持ちする包丁をつくりたいんです。

―よく切れる包丁をつくるためにどんな工夫をしていますか?


持った時の重さとか、バランスとか薄さとか、持ち手に対しての刃つけかた、刃の曲面とかいろいろありますね。

―曲面というと?


右利きの人と左利きの人で、包丁が食材に入っていく角度が違うので、刃の側面にわずかなカーブをかけているんですよ。

―包丁に利き腕があるなんて考えたこともなかったです!


あとは、当社の包丁は全て人が研いで仕上げています。包丁は量産化することも可能なんですが、量産化していたとしても一丁一丁、微妙なちがいがあるんです。車も、個体によって微妙に性能にちがいがありますよね。それと一緒でちょっとずつクセがある。だから、うちの職人たちは、包丁ごとに作業を変えてるんです。刃の厚みや重さが全部同じじゃないわけですよ。

―使いやすい、切りやすいっていうのは、本当にいろいろなこだわりで成り立っているんですね。

職人さん一人ひとりの手で、包丁が研がれていきます。
職人さん一人ひとりの手で、包丁が研がれていきます。

仕上げの刃付工程、美しい刃ができあがっていきます。
仕上げの刃付工程、美しい刃ができあがっていきます。

「つくりたいもの」=売りたいもの

―改めてお聞きしますが、マサヒロさんの大事にしている理念はなんでしょうか?


今年、目標として掲げたのは、「売れるものをつくるんじゃなくて、つくりたいものを売ろうよ」ということでした。儲かるものではなくて、今までなかった市場を探し、新たな提案ができる刃物をつくるということですね。

―使いやすさ、切れやすさにこだわるのも、「つくりたいもの」の一つなんでしょうか。


安い包丁を選ぶのも、人それぞれだから、それを否定するつもりはもちろんありません。だから全員に認められなくてもいいと思っています。世の中の数人がファンになって「いいな」って言ってくれる。他のメーカーの包丁もある中で、うちの包丁を選んでくれる人がいたらそれでいいんです。

―今後「つくってみたい」と思う商品はありますか?


「包丁屋さんがつくったらこうなりました」という刃物はつくってみたいな、と色々試しています。

―例えばどんな商品がありますか?


いまは波刃(なみば)という、生ハム用の包丁に力を入れてますね。ただ、いままで波刃はハム用ではなくて、刃の技術としては昔から存在していても、あまり注目されていなかったんです。

―注目したきっかけは何だったんでしょうか?


包丁の展示会で、ある人に教えてもらったんですよ。「波刃で生ハムを切ると驚くほどよく切れるね」って。それからスペインにいる人にも試してもらったら1.5倍くらい早く切れるみたいで。それで波刃ってもっと将来性があるんじゃないかと気づきました。

実際に波刃も見せていただきました。
実際に波刃も見せていただきました。

―いままでとは別の使い方が見つかることもあるんですね!他にも「つくりたいもの」はありますか?


プロの女性シェフが使いやすい包丁も開発しています。一般的に女性は男性よりも手が小さいし、力も弱い。それなのに、使う道具は男性シェフとおんなじ包丁なんですよね。

―たしかにそうですね…。


軽い包丁や薄い包丁って、家庭用にはあるんですが、プロが使う牛刀という大きな包丁で軽いものってないんですよ。だから、つくってみました。いままで誰もつくってなかったんですけどね。それが、「売れるものを売るんじゃなくて、つくりたいものをつくろうよ。」ということ。だから「つくりたいもの」を見つけなきゃいけないんですよ。

これからのマサヒロ、進む方向とそのための仲間

―先ほど海外との文化のちがいの話も出ましたが、外国でのニーズもあるのでしょうか?


そうですね。先代の頃から少しずつ海外に進出していっていたのですが、私の代でやっと柱になってきたという感じですね。ヨーロッパでも注目され始めていて、最初は文化の違いがあったんですけど、「日本の包丁いいぞ」と人気が大きくなってきているんですよ。

―日本と海外では人気のデザインもちがうんですか?


ん〜、私はデザインについてはできるだけ興味を示さないようにしているんです。デザインがいい物ももちろんいいと思うんですけど、やはり包丁は道具なので、使いやすさを優先したいと思うんですよね。

ヨーロッパの方に一度デザインについて指摘されたんですけど、その時に「流行を追いかけたデザインというものはつくりたくない」と改めて決意したんです。デザインには流行りがあって、流行るものは廃りますからね。

―いままでの話を受けて、これからマサヒロをどういう会社にしていきたいですか?


当社は流行るものはつくらずに、デザインも一切変えずに40年前から変わらない商品を今でも売っています。なぜなら、この包丁が現在でも一番売れている商品だからです。いいか悪いかは人それぞれなのですが、理解してくれている人はいるので。25年使った後、「また同じ商品を買おう」と考えてくれるお客様を今後も大切にしていきたいと思います。

―これからも本物をつくっていくためには、どんな人と働いていきたいですか?


仕事ってやっぱ楽しくやらないと面白くないですよね。仕事はもちろんつらいときもありますが、でもつらい気持ちばっかりではいけない。だから従業員にも楽しさ、楽しめることを求めています。

―そうですね。楽しさは大事ですね。


仕事が好きだから上達するわけですよね。嫌々やっていても上達しない。好きだからのめり込んで、もっといい方法はないか、別の方法はないかと考えられる。だから一番はこの仕事が好きでやってくれるということ。私自身がそうありたいと思っています。

―社長が楽しめるからこそいい商品もつくれるし、社員さんも楽しめるのかもしれないですね。
社員さんから「こういう包丁つくりたいです」って提案されたら開発しますか?


もちろん!提案があればいくらでも聞かせてほしいと私は思ってますし、実際そういう風にも言ってます。新しい意見を出してくれる人をいつでも待っています。

〜編集後記〜
毎日使っていて、必要必需品である包丁。使えば使うほど切れ味が無くなってしまい、一ヶ月ごとに研がなくてはならないという包丁を使っていましたが、研ぐという作業は中々に面倒で、そんなに研がなくてもいい包丁ってないのかなぁと常々思っていました。
研げば研ぐほど包丁というのは傷んできます。なので今回、マサヒロさんのお話を聞いてあまり研がなくても良い包丁だからこそ、長く使い続けることが出来るのだなと思いました。
また、職人さん一人一人が自分専用の羽布(包丁を研ぐ道具)で研いでいるので、人によって少しクセが出てしまうらしいのですが、それも一つ一つ手つくりで包丁をつくっているからこその味なのだと感じました。
岐阜が誇る、使いやすさと切れ味にこだわった完璧な包丁。ぜひ、一度その使いやすさを体感して頂きたいです。

SHARE

企業理念

あえて流行は追わない。
ずっと愛用していただける
価値ある包丁をつくりたい。

Company Profile

社名
株式会社マサヒロ
設立
1948年10月(創業:1932年4月)
代表者
代表取締役社長 服部浩司
資本金
1,000万円
事業内容
事業内容 業務用包丁、及び家庭用包丁の製造並びに販売、機械刃製造
本社住所
〒501-3994 岐阜県関市倉知90
東京営業所:〒103-0021 東京都中央区日本橋本石町4-5-8 日本橋川村ビル2階
電話番号/FAX
TEL:0575-21-2100/FAX:0575-24-2155
会社URL
http://masahiro-hamono.com/

SHARE